的外れなメロス

的外れなメロス


羽衣は撃たれてもなお、宙に舞っていた

世間という押蓋に

ぎゅうぎゅうと押し込まれたが

ふたりは笑いながら雨の中を走った

エナメル靴の硬い音が雨音と混ざって降った

祝日は手付かずのまま、まだ充分に残っていた

果たしてこんにちに終わりはあるのか

わたしもふたりの後を走った

謎や懐疑をひっくるめて走った

徘徊

徘徊

せっかくの嘘が本当だなんて
飽きてしまったラムネの後味を口に残したまま
味気ない「はい」を唄っている

ゆっくりと腐るために、
なんでも手元に残しておいて

宛名を書かずに祈りつづける
遠くで笑う人々の顔に
私の涙が懸るように

スポイトは送って差し上げますから

葡萄園

休日の使い方を忘れたまま、

草原で寝ころぶ人を夢にみた。

川で足を洗って、葡萄園の隅に住んでいる。

私は猫で、葡萄の木の下で、眠る。

まるまって眠っている。

その人に抱きあげられ、

名前をつけてもらうことを夢見て、眠る。

まるまって眠っている。

 

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葡萄ってあんまりまともに食べられないのだけど、(私の場合、まともに食べられるものを探す方が難しいかもしれない、と最近思いはじめている)あの存在が好きだ。

なんだか優しそうだから、とかテキトウな理由をつけたくなるところからしても、どうも恋みたいできもちわるい。

きもちわるいという表現が最近使いやすい。実際、なんでもかんでもきもちわるい。

自分の笑顔とか、乾いた靴。爪切り、なにもしていない時間、バラエティー番組。なるべくせまい部屋で、まばたきの練習なんかしていたい。というのは嘘。

こんな文章書く奴はきもちわるい。(酔っていないから余計に)

ところで「葡萄」って漢字、絶対に書けない。

 

 

 

 

 

木の実

‪木の実


泣きたいけれど邪魔もはいる‬

‪横断歩道は渡りにくいのにうつくしい‬

‪スカートの長さは気にならない。夏が近いから‬


街は動かないのに不安になるし

世界を守るのは人間じゃあ、ないのだろう

進化はなるべく大胆にカラフルに

道を開けなさい、でなければ殺すわ。

魔女が笑ったカラクリのない運命に

沈むこころをひきあげる


砂場であそぶ子供たちには

音を知らないあの文字を贈る

 

網棚に海

網棚に海

 

 

脳内リセットメロディをかけた

せっかく雨だから歌っていた

弟がコンソメスープを煮ていた

 

橋が崩れそうだった

 

嘘をついても鼻が伸びなくて、

頼めないことを片付ける今日明日

新しく何か生み出さないでくれ

ちいさな火さえ吹き消してくれ