失われた環

失われた環

 

 

書き忘れた季語を

見つからないように足元へ埋めた

なるべく幸せでいて下さいね

若い微笑みを支える日々にも

名前にしかない綻びがあること

「いつか」でいいから思い出せるよう


大切に大切にしていたんだものね

街を行き交う背中を眺める

称賛はなくても生活があるので

あなたへ届く、陽の光と言葉じりの全てが

暖かいことを願いましょうか


小さな笑いじわと答え合わせもせずに

まっすぐのびる行く道一本を

恐ろしく信じ込んだままなら

冷えた両手を溜息で温め、

なるべくそのままで生きて下さいね

未知なる

未知なる


図解出来ない挙式のなんたる

清々したいので脱いだヒールを持って走る街路

淀みを奪われ埋もれた身体

生き延びるために集めた角砂糖

壁画のように固まる両手で

君を見つけて解けた金縛りの

残骸を小瓶に詰め、海へと流した

あの部屋に地球儀があれば

あの部屋に地球儀があれば

 


空のペットボトル

スマートフォンのアラーム

空のカルーア

声を持たない躰の塊、行方のない愛

燃えるゴミと燃えない2人のゴミみたいな言葉

失くしたピアス失くした甲状腺

連なった灰皿を子猫が零してはじまる明日

セントラル208号室、不安定な梯子

水中に酸素が足りない、この部屋に酸素が足りない

床で乾いた海軍志願者達

僕らの夢だった小さなその躰

 


地球儀さえあれば

あの部屋に地球儀さえあれば


何か大切なことを、

思い出したりしなかったのに


あの部屋に地球儀さえあれば

征服

征服


扱葉踏みつけ歩く人に騙された

昨晩の風が全て奪ってしまった

昔の記憶、そう、僕らの全て


引き出しの奥に眠っていた思い遣りが

装飾品みたいに酷く渇いていた

密度の高い吐き捨ての台詞は

安っぽい朝食の香りがした


日々に媚びて帰れなくなった青い鳥が

片端でいることの憎しみをこぼしながら

いつまでもその続きを生きていた

それが全てかもしれなかったのだ

息切れジョーク

息切れジョーク

 

息を吸う  吐くまでにひとつ数える  謎が詰まっている  週末は短い  声も小さい  部屋は狭い  審判はどこにもいない  詰めて詰めて詰めて詰めて  そこには何もない  考えて答えても次には忘れて  旬の硬骨を喰らう  飽きずに朝起きる  息を吸う  吐くまでにひとつ数える