2019-01-01から1年間の記事一覧

失われた環

失われた環 書き忘れた季語を 見つからないように足元へ埋めた なるべく幸せでいて下さいね 若い微笑みを支える日々にも 名前にしかない綻びがあること 「いつか」でいいから思い出せるよう 大切に大切にしていたんだものね 街を行き交う背中を眺める 称賛は…

去し

去し 正解なんてどこにもないだろう やわらかい仔猫を拾ってきた君が 父親みたいな横顔で帰ったので 剥がれ落ちた塗装も気にせず 家族の額縁だけを磨き続けた 世界にいくら騙されても 正解なんてどこにもないだろう 生きることすら忘れていたのだ

句読点が気になる人

句読点が気になる人 当たり障りのない夜に 君と睡眠時間を共有したい 公共施設に隠した心を 剥がしとるのが仕事ですから

未知なる

未知なる 図解出来ない挙式のなんたる 清々したいので脱いだヒールを持って走る街路 淀みを奪われ埋もれた身体 生き延びるために集めた角砂糖 壁画のように固まる両手で 君を見つけて解けた金縛りの 残骸を小瓶に詰め、海へと流した

あの部屋に地球儀があれば

あの部屋に地球儀があれば 空のペットボトル スマートフォンのアラーム 空のカルーア瓶 声を持たない躰の塊、行方のない愛 燃えるゴミと燃えない2人のゴミみたいな言葉 失くしたピアス失くした甲状腺 連なった灰皿を子猫が零してはじまる明日 セントラル208…

征服

征服 扱葉踏みつけ歩く人に騙された 昨晩の風が全て奪ってしまった 昔の記憶、そう、僕らの全て 引き出しの奥に眠っていた思い遣りが 装飾品みたいに酷く渇いていた 密度の高い吐き捨ての台詞は 安っぽい朝食の香りがした 日々に媚びて帰れなくなった青い鳥…

息切れジョーク

息切れジョーク 息を吸う 吐くまでにひとつ数える 謎が詰まっている 週末は短い 声も小さい 部屋は狭い 審判はどこにもいない 詰めて詰めて詰めて詰めて そこには何もない 考えて答えても次には忘れて 旬の硬骨を喰らう 飽きずに朝起きる 息を吸う 吐くまで…

対象外

対象外 他人の庭にだけ昇った太陽の あまった光を盗み食うていた 毎朝軒先へ青臭いバケツを置き 溜まった光を盗み食うていた 行く先々で呼び止められる 名前を誰かに盗まれたまま ねぇ、で振り返り、はい、と答える 背中に貼られた紙切れの枠内に住む 罰点の…

サンタン

サンタン 無駄に高いだけの空だろうか 雲なんて地まで落ちるだろうか 同じ太陽に焼かれているらしい 生活の端々に付箋をして 思い当たる全ての利害を分け合える日が来て 健全で良好な笑顔を直接 心臓に染み込ませることが出来るだろうか

スパンコールの唄

スパンコールの唄 水星から聞こえた声が君に似ていた まっ白な波の中、溺れた幼少期 スズメが朝食に若いセミを食べはじめ 小中高とチャイムが続く 暑い暑い吐く息さえも 15円切手が見た夏の海を渡る 仕事終わりのスパンコールは唄う

ベンチの無い国

ベンチの無い国 いつか、に戸惑う眼瞼の海 転がるボール、足元に消え 退くか退かすか差し当たる手背 金平糖で話す君が目障りだ またね、に怯えて動けない身体 今この場所だけに、深緑の雨 見えない影の向きも変わって マンホールとだけは遊びたくない 無理だ…

口承

口承 右より 君の敬語が 月にタオルケットを掛け、 眠らせてしまう 静かに動く四輪駆動、一時停止線を跨ぐ 秩序宇宙に4泊3日 薄荷ばかりで埋まった中指の爪 切って撒いても芽が出てこない 左へ

壁面

壁面 新聞配達の音で起きて 陽が溢れた布団の中で 満タンの湯船に横並びで 白い建物で白い服を着て 首を絞める手が痺れて止むまで 退屈だなぁ、珈琲を淹れる

紫の寄進

紫の寄進 スクロール、川が流れる 足裏だけで留まって 怖い淡いと容易に泣ける 叫び叫べば黙り込む乖離が 手首に付着、緩まないこと

自己統制権ふたり占め

自己統制権ふたり占め まといつく雲からあぶれる色彩 両手ですくい上げる、出来るだけ零さないように 口元まで運ぶ、 ぼくたちわたしたち、そんなに離れてなんかない 生きて、そして死ぬためのエネルギィだ さぁ飲み干して、 生きて、そして死ぬためのエネル…

ニセモノ救世主

ニセモノ救世主 声が鈴カステラで間違えてしまった 涼しい夢なんて意味がないので 教科書を食べて眠ってみせる はじまりの音は聴こえなかったのに フロッソ、書き留めておくのか

巣穴

巣穴 社会的口調が見せる 「職場」という名の月9ドラマを 黙って見ている 社会的口調に混ざる 一人称の耳当たりが良い カーステレオに沿って泣き あの子のままでいられたら それがどんなに幸せだろうか 社会的口調に混ざる 一人称の耳当たりが良い ひとつの…

半球形

半球形 虹色かな水滴 スマホの画面、目一杯に着地 生きてるのか死んでいるのか どこからともなく降っているのか 拭き取るまで命あと数秒

振幅変調

振幅変調 シルクロードの道のりに 絵の具セットを忘れた 正面衝突を防いで欲しいけど あぁ、ムリだろうな 性別を忘れ、棺桶にはいれるだろうか 最後はピアスをあけてもいいですか? 痛くはないよ、消えちゃうんだ僕 歯が全部残っていて欲しい 笑ったときに、…

オールナイト、祖国と地続きの今日

オールナイト、祖国と地続きの今日 脳みそがプチプチみたいに腫れる朝 別々でいられるなんて表情に 勝手にかぶれて喉が渇いた 正座した膝裏にたまった汗を拭く 指先が震え、 死に物狂いで隠蔽したあの日を 思い出してまた、無愛想に笑った 生き死により大切…

足枷

足枷 セリフの裏側、話し言葉は見ていません。 許して下さい、行ったり来たり クリアカラーの恐怖で縫った スリップを着せられたまま野放しで 穴開き階段、行ったり来たり

救援物資

救援物資 論点を売って助かりたい一心で 屋根裏部屋に隠した君の 首がないことに気がつかなかった

洗脳

洗脳 染み込んだ表層と 駆け巡る軽蔑に 全身全霊の裾を折り 決定権を持ち逃げで候

Shhh

Shhh 我々の血管を通る、月を砕いた分画が 透けて見える今朝の雲を造る 触らせて下さい、薄く弾ける心拍を聴く 書き込めない句読点を 明日の湯船に溶かそうか

地雷

うさぎはバンに乗り込む 業務的なグレーと固有名詞 スリップのシワを数える夜に 新品のチョークを折った解に 舵取りは言った、 「明日からまた日常です」

ムリヤリ090

どこまでもこのまま劣等生を演じる 死にかけの情緒を撫でまわす 漆喰の壁、消耗品の死体 繰り返す15分に 見えないエンドポイントを探した

完全食品

駄目駄目、ちゃんと 呼吸をしなくては しっかり飛べなくなってしまう 明日はよっぽど良いそうで 生姜を煮込んで流し込む それはとってもあついのだ ちょうどあの子は真っ白で 行く手を阻むこの余生